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筋腎障害性代謝失調症候群
釘宮 敏定
1
,
高木 正剛
1
1長崎大心臓血管外科
pp.1018
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205633
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筋腎障害性代謝失調症候群(myonephropathic-metabolic syndrome;MNMS)は1960年に米国の外科医Haimoviciにより初めて報告された急性動脈閉塞の合併症の一つで,阻血をきたした患肢の著明な腫脹・疼痛とともに高ミオグロビン血症,ミオグロビン尿,高カリウム血症,代謝性アシドーシスなどの全身症状を呈する症候群である.閉塞動脈の血流を再開させる手術(血行再建術)の直後に発症する例が多いのが一つの特徴であるが,中には手術と無関係に発症する例もある.急性動脈閉塞というそれ自身,重大な救急疾患に合併し,発生頻度が決して低くなく,しかもいったん発生すると予後がきわめて悪いことなどの理由で,今日では,急性動脈閉塞の手術に際しもっとも注意すべき合併症の一つに数えられている.
本症の病態生理は,まず急性の動脈閉塞に伴う阻血のため変性をきたした筋組織からミオグロビン,カリウムなどが血中に流出し,過剰の血清中ミオグロビンが腎臓から排泄される際に尿細管を障害して急性腎不全をきたし,それからさらに種々の代謝性障害へと発展するものと考えられている.MNMS発生の危険性は,一般に閉塞した動脈が大きく阻血領域が広いほど,また発症から血行再建までの期間が長いほど高くなることが知られており,例えば腹部大動脈閉塞で阻血範囲が両下肢全体に及ぶ例や,動脈閉塞発症から長時間経過後に血行再建術を施行した例などに多発している.
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