おかしな検査データ
異常高値蛋白尿の経験
日東 真貴子
1
1岐阜県立多治見病院臨床検査科
pp.829-830
発行日 1981年10月1日
Published Date 1981/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205382
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当検査科では蓄尿蛋白定量をKingsbury-Clark法で行っている.ある日突然,蓄尿蛋白量5,200mg/dlという異常に高い測定値を示す検体に遭遇した.患者は,頻脈,眩暈及び全身倦怠を訴え,精査のため入院した27歳の女性である.入院時の検査データは新尿では蛋白(+),潜血(+),沈渣その他の結果は特に所見は認めなかった.肝機能,T3,T4は正常であり,末梢血検査ではWBC 6,100/mm3,RBC 333万/mm3,Hb 7.8g/dl,Ht 25.4%,CI 0.73とやや低色素性貧血を示した.
この異常高値蛋白尿を濃縮することなく原尿と患者本人の血清及び対照として正常血清を用い,セルロースアセテート膜(セパラックス)による蛋白分画を実施した.尿の分画像はアルブミンが正常より陰極よりであり,fast-γ位にM蛋白を示し,slow-γ位に非常に僅かなバンドが見られ,尿とは思われないパターンを示した.患者血清(蛋白濃度6.2g/dl),対照血清(6.5g/dl)はともに正常なパターンであった.
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