感染症の検査法 Ⅱ 感染症各論
[1]全身性感染症
1 敗血症
澤江 義郎
1
1九州大学医療技術短期大学部
pp.594-598
発行日 1989年5月15日
Published Date 1989/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204989
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疾患の概要
敗血症(sepsis)とは,身体の組織あるいは臓器のどこかに原発巣としての化膿巣があり,そこから病原菌が血中に持続的または断続的に流入して,全身の血行散布による二次感染巣の形成と,産生された毒素や代謝産物などによる悪寒・戦慄,高熱,全身倦怠感,ショックといった重篤な全身症状をきたす疾患である.したがって,生命にかかわる重症全身感染症といえる.
一方,腸チフスや流行性脳脊髄膜炎のときのように,感染症の発症過程で病原菌が流血中に侵入しているような場合には菌血症(bacteremia)といわれるが,両者の区別は困難であることが多く,欧米では両者を合わせて菌血症といっている.わが国では,この広義の菌血症に近いものとして,敗血症という用語が使用されている.また,抜歯後とか,尿道カテーテル挿入時,内視鏡検査施行時や骨髄穿刺時などに一過性の菌血症をきたし,発熱をみることがあるが,このときは一過性菌血症といって,敗血症とはいわないようである.さらに,菌血症という場合には,心臓弁膜症や先天性心臓病などに合併してくることの多い感染性心内膜炎も含まれてくる.
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