病気のはなし
敗血症
小林 芳夫
1
1川崎市立川崎病院内科
pp.350-355
発行日 1980年5月1日
Published Date 1980/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202047
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
敗血症は発熱,意識障害,血圧低下,呼吸促進,頻脈,乏尿などの重篤な症状を呈し,血中より菌を証明する疾患で,感染症のなかでも最も重症な疾患の一つである.適切な治療を迅速に行わないと多くは死亡する.治療の主役は抗生剤であるが,敗血症の原因菌は多種多様で,使用する抗生剤も原因菌により異なる.したがって血液培養により原因菌の検索に努めることが,本症の治療では重要なポイントの一つと言える.
多くの症例において本症は基礎疾患のある患者に発症をみることが知られている.すなわち悪性腫瘍,血液疾患,肝胆道系疾患,腎疾患,糖尿病,外科的あるいは泌尿器科的術後などが教科書的に挙げられている.膿瘍を敗血巣とする原因菌としては黄色ブドウ球菌が以前より知られているが,最近では,こうした基礎疾患のある患者に発症する敗血症の原因菌として,大腸菌,肺炎杆菌,Enterobacter,Serratia,緑膿菌などが主要菌種として注目されている.更に,これらのグラム陰性杆菌に加えて,Acinetobacter calcoaceticus,Alcaligenes faecalisあるいは,緑膿菌以外のPseudomonas属であるPseudomonas cepacia,Pseudomonas maltophilia,Pseudomonas putidaといったブドウ糖非発酵グラム陰性杆菌による敗血症の報告もみられるようになってきている.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.