感染症の検査法 Ⅰ 最近話題の感染症病原微生物
[5]Chlamydia
副島 林造
1
,
日野 二郎
1
,
中川 義久
1
,
岸本 寿男
1
1川崎医科大学呼吸器内科
pp.568-574
発行日 1989年5月15日
Published Date 1989/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204984
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はじめに
クラミジア感染症は世界中に広く存在することが知られ,現在,世界でもっとも多い感染症と考えられており,肺炎・尿道炎あるいは結膜炎などの全身性の感染症を引き起こすことが知られている1).近年,直接証明法や分離法の目覚ましい進歩により,わが国においても各科領域でその蔓延状況,臨床像についての積極的な検討がなされ始めている.
呼吸器領域におけるクラミジア感染症は,従来Chlamydia psittaciによるオウム病(Psittacosis)がよく知られているが,近年Chlamydia trachomatis,さらに新しいChlamyciaと考えられるTWAR株による呼吸器感染症も話題となってきている.TWAR株とは最初1965年に台湾でトラコーマ患児の眼から分離されたTW-183株と,その後ワシントン大学で急性気道感染症例の咽頭から分離されたAR-39株から,現在TWAR(TWは台湾,ARはacute respiratorydiseaseの略)と呼ばれているものである2).当初はその増殖における性状からC. Psittaciの一亜型と考えられていたが,その後DNAホモロジーや制限酵素断片の泳動パターンの相違などから,C. Psittaci,C. trachomatisとは種を異にするものと考えられるに至っている3).またイランのトラコーマ患児の眼からC. 10L-207株というChlamydiaが分離されているが,現在これもTWARとほぼ同一のものとみなされている4).
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