- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
液相において生成される抗原抗体複合物(immunecomplexes;IC)を定量的に解析する方法の嚆矢はHeidelbergerとKendallによる定量沈降反応である1).本法は分離したICについてmicro-Kjeldahl法によって窒素を定量するという,精密ではあるが煩雑な方法であった.その後3年たって,Libby2)はICの生成を光学的に定量解析する方法を発表した.この方法は定量沈降反応に比較して分析に要する時間を劇的に短縮させた実用的な方法であったにもかかわらず,最近まで日常検査法として採用されることはなかった.この方法を実施するに十分な性能を備えた光学的装置の開発が進んでいなかったためと考えられる.
この方法が日常検査法として見直されるようになったのは,臨床化学検査の自動化が進行し,同種あるいは類似の分析装置にこの原理を応用すれば化学検査と同様に抗原抗体反応を自動的かつ定量的に分析することが可能であるという認識の生じたせいであろう.免疫血清検査に対する需要の増大がそれに拍車をかけた.このような認識を生じせしめた背景としていくつかの先人的な研究を紹介する必要があろう.その一つは,非イオン性重合体の添加による抗原抗体反応の増強である3).Hellsing4)の一連の研究により,液相の抗原抗体反応系に非イオン性重合体を添加することにより反応は著しく促進され,当量域が抗原濃度の高いほうにシフトし,かつ反応時間も短縮されることが系統的に明らかにされた.その二つは,Killingsworthら5),Ritchie6)による実用化装置の考案である.彼らはフロー・システムによるフルオロネフェロメーターを用いて血漿蛋白成分の自動的定量法に成功した.いわゆるAIPシステムである.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.