検査を築いた人びと
喉頭鏡を臨床医学に応用した ルートヴィヒ・チュルク
深瀬 泰旦
1
1東京慈恵会医科大学医史学
pp.1172
発行日 1987年10月1日
Published Date 1987/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204284
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喉頭鏡を発明したのは,9月号で述べたようにロンドンの声楽家マニュエル・ガルシアであるが,これを耳鼻咽喉科の臨床に応用したのはチュルクかツェルマークか,いまなお論争が続いているといっても過言ではない.ある書物には「喉頭鏡の臨床的応用はチュルクとツェルマークがそれぞれ独立して行い,それは1858年のことであった」と記されているが,ある書物では,「チュルクは,喉頭鏡の臨床的応用には将来性がないと考えていた」と書かれている.
19世紀ヨーロッパ医学を代表する新ウィーン学派の中心人物の一人であるルードヴィヒ・チュルクは,1810年7月22日にウィーンで生まれた.オーストリア宮廷の宝石細工人であったチュルクの父親は,息子の社会的・経済的地位を確立するため,物惜しみせず,あらゆる努力を傾けた.チュルクが成人してからは,経済的独立によって,何ものにも煩らわされることなく,神経系の解剖学と病理学を徹底的に研究することが可能になった.
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