コーヒーブレイク
医学・医療の原点
U. Y.
pp.899
発行日 1985年10月1日
Published Date 1985/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203465
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医学が進歩しても,現在でも依然として患者が外来を訪れ,診察室に入って来る姿を見ることから医療は始まる.救急部に患者が抱きかかえられて入って来ても,本質的には変わらない.医療を求める人と,医療を専門とするそれを受ける側があって,医療は始まる.病める姿を見つめる医師のまなざしが医学の始まりであることは,古今東西を通じて変わりはない.
その医師の鋭い直感が診断への方向づけを生み,検査を行い,正しい診断に至り,また新しい病気の発見へと進む.検査法は進歩し,データの質は向上し,その結果は迅速に得ることができる.生化学的,あるいは機能的,あるいは形態学的,あるいは分子生物学的裏づけが,臨床的所見に加わって診断は確実になり,有効な治療ができる.言葉を換えれば,臨床的事項にこれらの検査上の所見が加わって,疾患として独立する.臨床的所見には客観的なそればかりが重要なのではない.主観的に,なんとなくおかしい,なんでもないのではないのか,といったことも重要である.この主観的直感的判断が,優れた臨床家であるか否かの重要な資質の一つであるに違いない.
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