エトランゼ
サムライ・M氏の話
常田 正
pp.851
発行日 1985年9月1日
Published Date 1985/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203453
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M氏はサムライであった.格好は瀟洒(しょうしゃ)でダンディーではあるのだが,心がチョンマゲをつけていた.彼は酒好きで至るところで酒をたしなむ.ホテルの室を出てくるときに,うっかりウィスキーの瓶を手に持ってエレベーターに乗ってしまう.エレベーターの中でぐいぐいやってしまう.サンフランシスコの街角でタクシーを待ちながら,大道に向かって立小便を始める.
英語で自己紹介をするときには,必ず自分が日本の一流大学の卒業であり,町で一番の旧家の出身であることを誇らしげに語る.郷に入っても郷に従わず,自分のスケジュールをしっかり守ろうとする.彼のスケジュールの午前の部はほとんどベッドの中である.
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