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脂質抗原による梅毒血清反応は,たとえ多少の偽陽性反応を生ずる欠点はあっても梅毒を100%検出できるし,その抗体価の消長は臨床症状とよく一致するので治療経過の観察に有用であるなど,TP抗原での反応の普及した現在でも梅毒の診療には欠かすことはできない検査である.その中でもmicro flocculation testの一種であるVDRL(Venereal Disease Research Laboratory)slide testsは,使用する被検血清の量は少なく,操作が簡易でしかも鋭敏なため,WHOの推奨を受け,世界各国で実施されている.このVDRL法が米国CDC(Centers of Disease Control)の承認を得て,その細部を日本の事情に適するように改良されたのがガラス板法である.厳密な比較実験によってもVDRL法と同様の成績を示すことが認められている.しかし,表1にみられるように抗原の比率の一部や,使用する器具や術式の一部が異なっているし,判定の基準や表現方法,定量法の希釈のやり方も異なっているので,国際的にはこの両者は同一とは認められていない.
このガラス板法は簡単な方法であるが,その条件はなかなか微妙であるので指示どおり忠実に実施することが望まれている.最近ではSTS 3法で総合判定することは少なく,STSはガラス板法のみ,TP反応はTPHA法のみでスクリーニングすることが多いので,VDRL法における"Manual of Tests for Syphilis"に記載されているような,陽性コントロール血清による抗原浮遊液のチェックや,判定の読みのチェックなどを参考にして,特に慎重に実施することが望まれる.
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