コーヒーブレイク
かくれんぼ
M. K.
pp.1026
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202906
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子どもの頃の好きな遊びの一つにかくれんぼがあった.運動神経が鈍いために,鬼ごっこのように固有の能力で勝負がつくものが苦手だったのかもしれない.昔は空地や路地が主な遊び場だったが,その決して広くはない限られた遊び場の中で,アナ場を見つけるのに夢中になり,道端のドブに落ちたり,木の板や針金で手足や洋服にかぎ裂きをこしらえては母親に叱られたことを思い出す.
近ごろわが家の犬もかくれんぼの面白さを覚えたらしい.ボール投げをしていて,犬が拾いに行った透きにカーテンのかげに隠れたのがきっかけで,始めは姿が見えないことでオロオロしていたが,見つけた時の得意そうなはしゃぎ方がおかしい.家事や仕事が一段落するのを見はからってはボールをくわえて来て足元にころがし,"遊ぼ!"という表情で見上げる.子どもと同じで何度でも同じことの繰り返しをせがむが,狭い家の中のこととてそうそう隠れる場所がない.一度隠れた所は必ず確認する上に,ボールを捨いに行く時にチラリと振り返ったりするズルも覚え,その悪知恵のつき方は頼もしい(?)ほどである.そのくせ特に身を隠さずに犬の目の高さにしゃがんでいると,隠れた場所から探し出すことに夢中になっているせいか,却って気付かないことがある.我々も仕事の上などで往々にして同じように経験をすることがあるので面白く思った.
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