私たちの本棚
—ロゲルギスト 著—積極的な科学へ—物理の散歩道
本山 生夫
1
1癌研病院中央検査部
pp.982
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202894
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今さら言うまでもないが,ずいぶん便利な世の中になった.物質文明が発達し,私たちの必要なものはたいてい手に入れることは可能である.(もちろん代価は払わなければいけないが.)へたをすれば積極的に必要としない物でも,その魅力にひかれて買ってしまうということも多いと思う.
大人にも小人にも言えることであるが,遊びだけにかぎってみても,その道具は与えられ,遊びそのものまでも与えられてしまっているように感じられる.私たちの臨床検査の職業についても決して例外ではない.検査用の試薬はキット化され,器具はディスポーザブル化し,分析機はコンピューターを利用し比較的,簡単にそして正確に結果を出すことが可能になった.この結果,私たちはその便利さに慣れてしまい,その基本にあるものについては何ひとつ疑問を感じなくなってしまうようである.このように当然のことと思ったり,あまり疑問を感じなくなっているような日常的な現象を取り上げて,科学の基本的なことを考えるきっかけを与えてくれるのが,この「物理の散歩道」である.この本はすでに「第四・物理の散歩道」まで出版されているので,すでにお読みの読者も多いと思う.しかし私たちも自然科学にたずさわる一人して,病気,検査,患者を見つめる点において共通の姿勢があるのではないかと,屁理屈をつけて取り上げてみたのである.
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