検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
細菌の数値同定の進展と理論
倉持 重彦
1
,
坂崎 利一
1
1国立予防衛生研究所細菌第一部
pp.803-807
発行日 1983年9月1日
Published Date 1983/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202848
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本来の医学細菌検査は伝染病菌またはそれに類する感染力をもつ病原菌の検出のためのものであったが,この20年来感染症の様相は一変し,特殊病原菌による感染症が激減する一方,従来の非病原菌によるいわゆる日和見感染が主体を占めるようになった.しかも日和見感染症では感染菌の種類と臨床症状には関連性がなく,症状から検出菌種を予測することができないのみならず,そのような多種類の菌について知識を持つことは,例え専門領域とはいえわれわれの頭脳の範囲を越えるといわねばならない.
このような事情から,臨床細菌の同定方法は世界各国の研究者によって工夫され,それに関する論文は1960年来でもおびただしい数になっている.これらの同定様式を大別すると,1)表に照合して該当菌名を探す図表式同定,2)系図式のいわゆるフローチャートに従って菌名を求める分岐式同定法,3)性状検査のテストの種類と数を限定し,それぞれのテストに特定の点数を与えて,その合計点で該当菌名を求める算数式同定法,4)各菌の性状をマークしたパンチカードを母カードとし,未知菌の性状によって母カードを選出するパンチカード式同定法,などがある.しかし,菌の性状は同一菌種でも菌株によって異なることがあるうえに,同定の対象とする菌種が多くなればなるほど,鑑別に必要なテスト数も多くなり,これらの従来法では複雑で処理しきれなくなってきた.
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