検査を築いた人びと
組織染色法の先駆者 カール・ワイゲルト
酒井 シヅ
1
1順天堂大学医史学
pp.620
発行日 1983年7月1日
Published Date 1983/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202808
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19世紀,産業革命の余波を受けて,ドイツでは従来の天然色素に代わる人工色素の合成が盛んになったが,それは工業界のみならず,医学界にもコペルニクス的変換をもたらした.その一つの例がアニリン色素を用いた染色法の登場による組織学と細菌学の飛躍的発展である.17世紀に始まる顕微鏡の生物学的使用は,からだの微細構造を徐々に明らかにしていったが,19世紀までは無染色の標本を使っていた.アニリン色素が特定の組織を選択的に染め分けることを知るや,組織染色法が開発された.その分野で先駆的な仕事をしたのが,カール・ワイゲルトである.
カール・ワイゲルトは1845年3月9日にドイツのシレジア地方のミュンスターベルグという町に生まれた.ここは第二次大戦後,ポーランド領となり,またそこが化学療法の創始者パウル・エールリッヒの生誕地でもあるために,エールリッヒの名前を町名に冠している.エールリッヒの母はワイゲルト家から出た人であり,ワイゲルトはエールリッヒより9歳年長の従弟であった.
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