病気のはなし
鉄欠乏性貧血
刈米 重夫
1
1福島県立医科大学第一内科
pp.496-501
発行日 1983年6月1日
Published Date 1983/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202777
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
その概念
鉄欠乏性貧血は,その字のように鉄が欠乏したために起こる貧血である.鉄は赤血球に含まれている赤い色素,すなわち血色素の構成成分である.血色素はグロビンという蛋白部分にヘムという色素が結合してできているが,ヘムはポルフィリン核の中央に鉄原子を持っている.赤血球は骨髄の造血組織内にある赤芽球が成熟してできる.赤芽球は成熟過程で血清中の鉄を摂取して胞体の中に血色素を合成する.血色素がある程度生成されると,赤芽球は細胞核を体外に放出して,核のない赤血球になる.この血色素の材料の一つである鉄が血清より十分供給されないと,赤芽球の多くは成熟して赤血球になれず,崩壊死滅してしまうために,赤血球の産生の不足を起こして貧血を招来するのが鉄欠乏性貧血である.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.