検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
臨床化学分析談話会の"GOT活性測定法に対する標準的測定法"の解説
小川 善資
1
,
林 長蔵
1
1大阪大学病院中央臨床検査部
pp.453-457
発行日 1980年6月1日
Published Date 1980/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202066
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"酵素活性測定は,影を測るようなものである"という言葉がある.これは酵素そのものを直接的な手段によって測定せず,酵素の持つ触媒としての能力を測定する以上,どうしてもつきまとう問題である.よって,影を作らせるための方策である投影法が明確でなければ,測定値が意味のないものとなる.現実には非常に多くの測定法があり,このため施設間の測定値が大きくバラつき,酵素活性測定に対する混乱は非常に大きい.
このような混乱は国内的な問題だけではなく,国際的にも大きな混乱を生じており,各国臨床化学会や国際臨床化学連合,国際生化学連合酵素委員会までも含めた多くの機関で,この混乱を回避し,酵素活性測定の信頼度の回復のための努力がなされている.我が国においても,臨床化学分析談話会酵素委員会を中心に,活発な討議がなされ,日本におけるGOT活性測定の"標準測定法"確立のための基礎となる"標準的測定法"(以下,本法と略)が3年間の活動のまとめとして公表された.前述したごとく,諸外国においても既に数種の勧告案が提出されているにもかかわらず,我が国において新たに本法を提出するに至った理由は,正確な酵素活性測定のためのシステム全体を考えるという方向性でこの問題に取り組んだため,測定装置の性能を定めたこと,試薬の検定法やその規格を定めたこと,などの配慮がなされている.また,測定法においても,次のごとき点が他の勧告案にはない本法の特徴で,このような意味では最も親切で,最も改良された勧告案であることを望んで作成されたものである.
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