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多くの疾患や病的状態において血小板がどのように関与しているかを知ることは重要である.特に血栓性疾患では数多くの研究がなされ,血小板と血管壁の密接な関連が注目されている.人体では血管壁に何らかの傷害が生じると,内皮細胞の損傷が起こり,露出した内皮下組織に流血中の血小板が粘着してくる,粘着した血小板は更に血小板血栓を形成し,同時にフィブリン網がこれを取り巻き血栓が強化されていく.これが実際に我々人体の中で,血栓が形成されていく過程であるが,この状態をできる限り生体内の状態に近い形で再現し,in vitroで観察しようとする試みが今までいくつもなされてきた.ここに紹介するBaumgartner法はそういう試みの中では最も生理的状態に近いと考えられる優れた方法の一つである.また,この方法は光顕下で血管内皮下組織に粘着する血小板ならびに血小板血栓を観察できるということも大きな利点の一つである.
本法はBaumgartnerらにより7〜8年前より開発されてきた方法であるが1),従来のSalzmannらの方法のように人工的表面であるガラスビーズへの粘着を血小板の停滞率で見ようとするのとは根本的に異なり,家兎大動脈を用いて実際の血管壁に血小板を粘着させ,光顕で観察しようというものである.また,生体内の動脈内環境を再現するために,人工透析用ポンプを利用して,毎分150mlの血流を作り出し,その回路内に置かれた血管片に血小板を実際に粘着させ血小板血栓を作り出そうとするものであり,血小板粘着能の測定法としては今までにない独得な方法と言える.
本法の臨床への応用は極めて有用で,血小板機能異常症,出血性疾患,血栓性疾患などに広く応用され,更に治療効果の判定などにも用いられ,数多くの知見が得られている.ほかの多くの血小板機能検査法に比べ,血管壁との関連性を把握できること,実際に血栓形成を観察できること,臨床症状との相関が良いことなどの利点を有するため,血小板ならびに血栓の研究において,応用範囲の広い測定法として重要な位置を占めつつあると言える.
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