技術講座 生理
臨床側からみたアーティファクト
江部 充
1
1虎の門病院臨床生理検査科
pp.59
発行日 1974年11月1日
Published Date 1974/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200626
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どんな検査についても正しいシグナル(情報)を得るためには,またそれを正しく理解し評価するためには,まずノイズ(アーティファクト)に対する知識とそれを識別できる能力を養わなければいけない.したがってこのトレーニングをしていない医師が,シグナルについて安易に臨床的な取り扱いをすることは好ましくない.心電図とか脳波のように増幅器と記録器からなる計測器を使う検査では,その計器のいろいろな特性,すなわち総合周波数特性,感度,記録速度などの条件と人体に由来する条件をよく理解したうえで,アーティファクトと真のデータを判断しなければならない.
たとえば,心電図についていえば時定数が小さくなればST節が斜めになり,心筋障害の判定としてのST低下が不明瞭になることがある.特に頻脈を伴ったり,基線が動揺するとなおさらのことその判定がしにくい.またT波の高さが低くなったり変形したりして体液電解質のアンバランスやジギタリスなどの薬物の効果とまちがえたりすることもありうる.10mm/mVの感度が正しく守られているか,感度の直線性が保たれているかどうかで,各棘波の振幅にたきな誤差を生ずることもあり,心肥大の判定で失敗することもある.記録紙の速度むらはPQ,QRS,QTなどの間隔の計測を誤らしめることがある.体動による着衣の静電気が間入性の期外収縮のごとく見えたりすることもありうる.
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