病気のはなし
リンチ症候群―(遺伝性非ポリポーシス大腸癌:HNPCC)
熊谷 二朗
1
1横浜市立みなと赤十字病院病理診断科
pp.648-653
発行日 2014年7月1日
Published Date 2014/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104316
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Point
●リンチ(Lynch)症候群は,DNAミスマッチ修復遺伝子の胚細胞性変異あるいは不活性化によって,全身のさまざまな臓器の腫瘍,特に大腸癌,胃癌,子宮体癌,卵巣癌などを発生する家族性腫瘍症候群である.なかでも大腸癌は最も頻度が高く,このため,以前は疾患名として“遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)”とも呼ばれてきた.
●リンチ症候群患者は生涯において高率に大腸癌を発生し,また初回発生診断時の年齢も一般の散発性大腸癌に比べて10歳以上若い.
●リンチ症候群の遺伝形式は常染色体性優性遺伝であり,その原因となるDNAミスマッチ修復遺伝子としては,現在までにhMLH1,hMSH2,hPMS2,hMSH6の4つが知られている.
●患者からの遺伝子を用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)検査はリンチ症候群の診断において重要であり,特に,その確定のためには必須である.
●リンチ症候群の大腸癌に対する治療法は散発性大腸癌に準じるが,患者は治療後も大腸を含む多臓器の腫瘍の多発が予想されるので,その早期発見のためのサーベイランスと,このような遺伝的素因を保有することに対する遺伝カウンセリングなどを行うことが必要である.
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