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新しい知見
一般に塩化銀皿電極(以下,皿電極)を用いた神経伝導検査(nerve conduction study,NCS)では,電極設置部位,ペースト塗布,皮膚抵抗,検者の熟練度,検査時間などの要因によって検査結果は大きく影響される.例えば,両側上下肢のNCSを完了するのに30分以上の時間を要することもある.このため,NCSは非常に手間と時間を要するという印象を与えている.慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室と理工学部は共同研究で,NCSを簡便に行える独自の能動電極を作製した.
能動電極は,オペアンプ・抵抗器・電源からなり,電極部は皮膚に比べて極めて高いインピーダンスをもつ.そのため,皮膚抵抗は無視することができ,検査前の皮膚洗浄とペーストは不要であるにもかかわらず,CMAP(compound muscle action potential)やSNAP(sensory nerve action potential)を記録することができる.
能動電極は,記録と基準電極がモールドされているため電極間距離が一定である.検査前に四肢の解剖学的指標を確認・マーキングし,筋腹中央に確実に記録電極を設置し,基準電極は筋走行に沿って固定するだけである.
筆者らは,健常人を対象に,皿電極と能動電極を用いて運動神経伝導検査を2回ずつ施行した.2回の検査間における活動電位の指標(遠位潜時・運動神経伝導速度・振幅)の相関性を検討した.その結果,両電極で計測された指標に有意差は認められなかった.しかし,2回の検査の指標の相関係数は皿電極に比べて能動電極で高値であった.また,能動電極を用いた検査時間は皿電極に比べて有意に短かった.アルコール綿による皮膚清拭,ペーストの塗布,テープ固定などの作業が不要であるためであろう.能動電極は皿電極と同等の検査精度を有すると同時に,病状変化を追跡するために経時的に検査を繰り返す場合や,多くの神経の伝導検査が必要とされ時間の短縮が必要な場合に有用であると考えられる.
今後,能動電極の臨床応用が期待される.
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