トピックス
ヒト爪を用いた糖尿病リスク診断
閔 俊哲
1
,
豊岡 利正
1
1静岡県立大学薬学部生体機能分子分析学
pp.432-434
発行日 2013年5月1日
Published Date 2013/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103933
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はじめに
糖尿病の初期段階は「痛い」「つらい」といった自覚症状に乏しく,病態を慢性的に持続させることとなるため,「未病状態での早期発見」が治療の鍵である.今日,臨床検査に汎用されている血液,尿は短時間内の健康状態を反映可能な利点をもち合わせているが,衛生面上の問題や採取に伴う苦痛,感染の可能性,採取者の限定,長期間の栄養変動および健康状態が反映できないなどの問題点がある.また,その他の唾液,毛髪では採集の際の時間帯,口内細菌の影響,毛髪の状態,生え部位により個人差が大きく,これらは臨床検査への抵抗感の強い児童・高齢者の健康モニタリングや疾病診断には向いていない.また,増加の一途をたどっている糖尿病は,日常的な健康管理や早期診断が最も重要な課題となっているが,慢性疾患の長期間病態変化をモニタリング可能な生体試料がないのが現状である.一方,筆者らが着目したヒト爪は構造上の特徴から,非侵襲的に採取が可能で痛みを伴わず,長期保存が可能であり,また,数カ月以上の長期期間の体内の栄養状態や過去の薬物使用履歴が残されている特徴がある.
本稿では,糖尿病リスク診断における新規非侵襲的な生体試料としてのヒト爪の可能性と有用性について解説する.
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