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爪のみかた
西山 茂夫
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1東大分院・皮膚科
pp.1148-1149
発行日 1967年8月10日
Published Date 1967/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201882
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爪の病変と全身性疾患の診断
爪の変化を内臓病変の現われとする考えかたは古くより認められているが,その診断的価値については問題が多い。それは,ある種の爪の変化は内臓病変によつて生ずるほかに,局所的な原因(外因)によつても,同じかたちで生じうるし,またある爪変化は相関関係の少ない,さまざまの内臓病変のさいにみられるし,さらにはまたある爪の変化は内臓病変と明らかに関係があるとしても,発生頻度がきわめて少ないなどの理由によるからである。
たとえば,爪のスプーン状の変化である匙状爪は鉄欠乏性貧血の一つの症状である場合があるが鉄欠乏性貧血のすべての患者にみられる徴候ではなく,むしろまつたく健康な人で,酸,アルカリなどの職業的接触によつて生ずることのほうが多い。古くより慢性の心肺疾患の徴候として有名なヒポクラテス爪は胸部疾患のほかにも甲状腺機能異常,肝硬変など種々の病的状態に伴つてみられ,さらには先天性家族性にも発生することは周知の事実である。またある種の爪の白い斑(Leuconychia)は,その発生頻度から,肝硬変と密接な関係があると主張する人もいるが,逆にそれをまつたく否定する立場もあり,診断的価値の評価はまちまちである。
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