Laboratory Practice 〈微生物〉
スポーツ選手(格闘技系)と白癬菌(Trichophyton tonsurans)
廣瀬 伸良
1
,
小川 祐美
2
,
比留間 政太郎
3
1順天堂大学スポーツ健康科学部柔道研究室
2順天堂大学医学部皮膚科学教室
3順天堂大学練馬病院皮膚・アレルギー
pp.726-729
発行日 2012年8月1日
Published Date 2012/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103618
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はじめに
皮膚糸状菌症(白癬)は主に角層,毛,爪に感染し,約30種類が知られている.ヒト好性菌の一つであるTrichophyton tonsurans1,2)は,元来東南アジアや南米の土着菌として生息していたが,1960年代には北米大陸で頭部白癬の主原因菌として知られるようになった.その後,1990年代には欧州大陸で流行し,2000年頃より格闘技(柔道,レスリングなど)スポーツ選手を媒介にわが国へ侵入,急激な感染拡大をみせ社会的な問題ともなっている.現在,本感染症の流行が確認されてから10年以上が経過し,感染拡大は一見収まっているかに見える.しかしながら,格闘技スポーツ選手集団ではいまだ白癬の集団発症が散発している.また,集団の10%程度のキャリア(保菌者)が存在するという報告3)もみられることから,今後,若年層の格闘技選手や他のスポーツ競技選手への感染拡大が危惧されている4).本稿では,T. tonsurans感染症の症状,疫学,検査,治療についてまとめる.
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