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はじめに
アルブミン製剤は,多人数分のプール血漿から病原体除去・不活化処理工程を経て製造された血漿分画製剤の一つである.その主な投与目的は,血漿膠質浸透圧を維持することにより循環血漿量を確保すること,および体腔内液や組織間液を血管内に移行させることによって治療抵抗性の重度の浮腫を治療することである.通常前者には5%の等張アルブミン製剤(加熱人血漿蛋白を含む)を,後者には20%や25%の高張アルブミン製剤を用いる.アルブミン製剤は,薬事法で定められた特定生物由来製品であるので,患者(またはその家族)への適切な説明,使用記録の作成と保管(20年間),感染症などの情報の報告を行わなければならない.
現在,アルブミン製剤の使用に当たっては,安全対策は薬事法,安定供給と適正使用は血液法(正式には「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」)に基づいてさまざまな施策が講じられており,両法の下でさまざまな指針,ガイドラインや制度などが厚生労働省から通知されている1).特に血液法の基本方針では,同製剤の国内自給達成目標が明記されており,さらに「血液製剤の使用指針」では,赤血球濃厚液,血小板濃厚液,新鮮凍結血漿と並んで,同製剤が血漿分画製剤で唯一,適正使用に関する指針が示されている.
このようにアルブミン製剤の適正使用と国内自給達成が,行政主導で特に推進されるに至った背景には,1975年の世界保健機構(WHO)決議以降,倫理的および国際的公平性の観点から,血液製剤の自国内での自給自足が国際的に原則とされるなかで,わが国の同製剤の使用量が,1980年代には世界生産量の1/3に達し,国内自給率が極めて低い状況にあったという事実がある.血液法の施行以後,同製剤の国内自給率は2007年度には62.8%まで上昇したものの,2008年度以降は再び低下に転じ,2010年度で58.1%まで低下し,特に等張製剤(5%製剤)の自給率が23.8%(2009年度)と極めて低値であることが問題視されている.以上のような経緯より,医療機関におけるアルブミン製剤の適正使用は今後ますます求められるようになるであろう.
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