Laboratory Practice 〈移植医療〉
―移植医療と検査⑧―造血幹細胞移植におけるHLA適合性
一戸 辰夫
1
1佐賀大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
pp.294-299
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103502
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はじめに
同種造血幹細胞移植は難治性造血器腫瘍や骨髄不全症などに対する根本的な治療法であるが,移植後に一定の頻度で発症する生着不全や移植片対宿主病(graft-versus-host disease,GVHD)の克服が大きな課題とされている.これらの免疫学的合併症はレシピエントとドナーの組織適合性抗原の相違を背景として発症すると理解されており,そのリスクを最小化させるために,従来はレシピエントとできるかぎりヒト白血球抗原(human leukocyte antigens,HLA)が一致したドナーを選択することが目指されてきた.しかし,近年における移植方法の多様化,特にさい帯血移植の普及に伴い,最近ではHLA不適合幹細胞ソースを用いた移植を行う機会も著しく増加している.HLA不適合移植においては,HLA適合ドナーからの移植と比較して,生着不全やGVHDの発症リスクが高まるため,移植の実施に当たってはレシピエントとドナーの間におけるHLAの不適合が「どの程度許容可能であるか」をできるかぎり科学的に評価するためのアルゴリズムが必要となる.本稿では,現在のわが国の臨床現場で幹細胞ソースの選択に用いられている基準に基づき,造血幹細胞移植におけるHLA適合性の臨床的意義を概観する.
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