増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典
Ⅷ 薬物検査
強心薬
山本 武人
1
,
鈴木 洋史
1
1東京大学医学部附属病院薬剤部
pp.959-961
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103325
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検査の概要
強心薬であるジゴキシン(digoxin,DIG)は,主にうっ血性心不全(congestive heart failure,CHF)や心房細動(artrial fibrillation,Af)などの上室性頻脈性不整脈に対して用いられる薬剤である.DIGが心筋細胞のNa+/K+-ATPase(ナトリウムポンプ)を阻害することにより,心筋細胞内のNa+濃度が上昇する結果,心筋細胞のNa+/Ca2+交換機構を介して細胞内にCa2+が流入し,細胞内Ca2+濃度が上昇することで心収縮力が増強する.一方で,DIGは房室結節の有効不応期を延長し,房室間の刺激伝達を抑制することで,Afにおいて心拍数を低下させる作用も示す.DIGの血清中濃度と,心臓の臨床症状および副作用には相関関係があることが知られているが1),後述するようにDIGの治療濃度域は非常に狭いため,DIG服用患者においては臨床症状のモニターに加えて慎重な血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring,TDM)が重要である.
なお,強心薬としてはジギトキシン(digitoxin,DTX)も長く用いられており,TDMも実施されていたが,DTXは2008年10月に製造中止となり,2010年3月には薬価基準から削除されたことから,本稿では解説を割愛させていただく.
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