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検査の概要
総蛋白・アルブミンの定量は全身状態をとらえる指標として有用であるものの,疾患特異性には乏しい.したがって,異常値を示した原因を精査したうえで対応する必要がある.血清中には100種類以上の蛋白が存在するが,その約6割はアルブミン,約2割は免疫グロブリンが占め,総蛋白の増減は主に両者の変動に左右される.アルブミンは栄養源,血漿膠質浸透圧の維持および水分保持,酸-塩基平衡の維持,各種物質の結合および運搬などの機能があり,肝臓で合成される.脱水以外に増加することは稀であり,ほとんどの病態に伴って減少し,低アルブミン血症になる.一方,免疫グロブリンはγ-グロブリンとも呼ばれ,抗体の本体としてβ細胞由来の形質細胞から産生される.低下する疾患として低あるいは無γ-グロブリン血症,増加する疾患として単クローン性高γ-グロブリン血症が代表的であるが,総蛋白・アルブミン定量のみでは確定できない.蛋白分画や免疫電気泳動法のデータを参照することが必要である.
日常検査法に関しては,総蛋白試薬はほぼ全施設でBiuret法が使われており,問題点は少ない.一方,血清アルブミンは測定法による測定値の違いが問題となる.現在使われている日常検査法はブロムクレゾールグリーン(bromcresol green,BCG)法,ブロムクレゾールパープル(bromcresol purple,BCP)法,改良BCP法の3法であるが,反応性は個々に異なる.すなわち,BCG法はアルブミンのみならずグロブリン分画,特に急性相反応蛋白とも反応する.BCP法はグロブリン分画とはほとんど反応しないものの,還元型アルブミンに比べて酸化型アルブミンとの反応性が高い点や,δ-ビリルビンや透析患者血清における負誤差が指摘されている.改良BCP法はBCP法における還元型と酸化型アルブミンとの反応差を解消した測定法であり,現在最も正確度が高い測定法とされている.このように,血清アルブミンは測定法による測定値の違いがあり,臨床上特に問題となる低アルブミン域において乖離が生じる.
本稿では一般的な指標について述べるが,BCG法と改良BCP法の関係については7,000例以上の患者試料について相関検討した文献1)があるので,それを参考にしていただきたい.なお,次に示したパニック値は,臨床医への緊急報告値に関するアンケート調査結果2)の最頻値である.病院の特色などによって臨床医の要望は異なるため,施設ごとに検討されることが望ましい.
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