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はじめに
薬剤治療の前に,患者の遺伝子や蛋白質などのバイオマーカーを調べ,有効性や副作用を予測して,最適投与量や投与方法を選択するといったオーダーメイド医療が推進されている.患者一人ひとりに合った治療方法を選択することが可能となり,今後の普及拡大に大きな期待が寄せられている.オーダーメイド医療には,治療技術や薬剤だけではなく,それらを選択するために実施する検査が不可欠である.この治療方針を決定するための検査を“Companion Diagnostics”(コンパニオン診断)と呼ぶ.コンパニオン診断とは“Theranostics”(Therapy-specific Diagnosticsからの造語)とほぼ同義的に用いられ,治療方針の決定のために,患者の遺伝子的特徴やゲノム情報を調べる検査である.これにより,患者個人個人に最もふさわしいオーダーメイド医療が提供されるとともに,創薬を能率化させることになると考えられている.
これまでの医療は,病期を診断した後,どの患者にも同様の治療を提供していた(図)1).すなわち,患者全体をマスとして捉え,薬剤の奏効率や副作用の発生率を考えながらの医療であった.このために,副作用が発生しないように薬剤投与量を抑える傾向があった.逆にこれは,薬剤効果が十分に発揮できない状況を導いていた.そこで,コンパニオン診断を実施して,薬効が期待される可能性がある患者,その医薬品の副作用を受ける可能性がある患者,または特別な代謝活性のゆえに異なる用量が必要とされうる患者をグループ分けし,そのなかで薬効が期待され,副作用の少ない群に薬剤を投与すると,高い奏効率と低い副作用発生率が見込めることになる.コンパニオン診断の概念は,オーダーメイド医療の不可欠な要素として,薬剤の開発および使用における斬新で重要なパラダイムになりつつある.
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