臨床医からの質問に答える
嫌気性菌の検査が必要な症例とは
山本 剛
1
1西神戸医療センター臨床検査技術部
pp.555-557
発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103201
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はじめに
われわれが臨床上,“嫌気性菌”と呼ぶ細菌は酸素濃度が低い環境にしか発育ができないもので,正式には“偏性嫌気性菌”という.偏性嫌気性菌の他に嫌気の名のつく細菌には“通性嫌気性菌”というものがあり,腸内細菌群やStaphylococcus spp.,Streptococcus spp.などが含まれるが,これらは日常的に好気条件でも発育するため,好気性菌として知られている1).
嫌気性菌はヒトの皮膚や粘膜に多数常在しているため,あらゆる部位で感染症を起こす可能性がある.主に口腔,胸腔,腹腔や婦人性器では嫌気性菌の関与する感染症が多く発生し,膿瘍形成から筋膜,組織壊死を伴った重症例まで多数存在する2).多くの場合は通性嫌気性菌や偏性好気性菌といった好気性菌との混合感染例が多く,培養検査をする場合は好気性菌を抜きにしては成り立たない.
一般の微生物検査室で行っている嫌気性菌培養は,嫌気専用の輸送容器の導入から,嫌気チャンバーや嫌気パックなどの嫌気性菌専用の器材の使用が必要で,簡易の菌同定の手法も少なく,感受性検査も手間とコストがかかるのが特徴である.最終的に適切な条件が満たされなければ発育不良となり検査できなくなるようなデリケートな検査である.
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