Laboratory Practice 〈微生物〉
Acinetobacter属菌のカルバペネム耐性
石井 良和
1
1東邦大学医学部微生物・感染症学講座
pp.548-552
発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103198
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はじめに
現在,多剤耐性菌の拡散が世界的な社会問題となっており,World Health Organization(WHO)は,表1に示す病原体を公衆衛生上重要な耐性菌と位置付け監視している(http://www.who.int/drugresistance/en/).すなわち,Acinetobacter属菌やニューデリーメタロβラクタマーゼ1(New Delhi metallo-β-lactamase-1,NDM-1)産生菌,肺炎桿菌カルバペネマーゼKlebsiella pneumoniae-carbapenemase(KPC)-型酵素産生菌などの多剤耐性菌は,WHOにより院内感染の原因菌として注視されている.通常,カルバペネム耐性は,メタロβラクタマーゼ(metallo-β-lactamase,MBL)産生,カルバペネム系薬に対する透過孔となる蛋白質の発現量の変化,あるいは染色体性セファロスポリナーゼ(AmpC)などによって獲得される.もちろん,Acinetobacter属菌においても同様のメカニズムでカルバペネム耐性を獲得するが,それに加えてcarbapenemase hydrolysing class D β-lactamase(CHDL)の産生によりカルバペネム系薬に耐性を示す.さらに,細胞壁合成酵素のβラクタム系薬に対する親和性が低下することによってもカルバペネム系薬に耐性を示す可能性が示唆されている(表2)1).本稿ではAcinetobacter属菌のカルバペネム系薬耐性に焦点を絞り,最新の知見を交えて概説する.
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