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このたび,日本臨床化学会代表理事に就任することになりました熊本大学の安東でございます.歴代の錚々たる代表理事の先生方のことを思うと第一歩を踏み出すにも足が竦む思いがいたします.とりわけ前代表理事の登勉先生の,素晴らしいバランス感覚を備えた巧みな手さばきを目の当たりにしてまいりましたので,正直なところ私ではいささか役不足ではないかと随分立候補を躊躇いたしましたが,幾人かの先生方の強力なお勧めもあり,信任投票を経てこの度重責をお引き受けすることになりました.これからしばらくの期間,本会のために粉骨砕身努力する所存ですので,会員の先生方におかれましては,何卒よろしくご指導,ご鞭撻のほどお願い申し上げます.
私の医師になってから今日に至るまでの道のりを少しご披露いたします.私は,熊本大学医学部卒業後,まず広く内科学を勉強したいと考え,いわゆるナンバー内科に入局し,患者の側から検査医学,臨床化学を垣間見ることができました.その後,学生の頃からとりわけ生化学に興味をもっていた関係で,大学院の4年間を生化学教室で過ごしました.臨床検査室が本格的に自動化される前の時代でしたが,大学院生として,医学部学生や医療技術短期大学(現保健学科)の実習を指導する機会を得ました.学生にAST,ALT,LDなどの測定法やキネティックを教えていたことを懐かしく思い出します.その後,検体検査部門における分析技術,自動化システムが急速に発展を遂げる訳ですが,その進歩には隔世の感があります.大学院卒業後,神経内科を経て,検査医学に身をおくことになりましたが,その間,生化学,医化学分野の研究成果がトランスレーショナル・リサーチの形で検査医学,臨床化学の分野に有効に生かされ,診断,病態解析,治療効果の判定などの医療活動を牽引していることを実感して参りました.本学会は昨年50周年を迎えましたが,臨床化学発展の歴史は,正に日本の医化学発展の歴史であるといっても過言ではありません.
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