役に立つ免疫組織化学●免疫組織化学で注目すべき抗体
精巣腫瘍とOCT4
森永 正二郎
1
1北里研究所病院病理診断科
pp.40-43
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103029
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はじめに
精巣腫瘍の9割以上は胚細胞腫瘍という特異な一群の組織型が占めており,その内訳は表1のように分類されている1).胚細胞腫瘍の免疫組織化学的マーカーとしては,これまでセミノーマや精細管内悪性胚細胞の診断には胎盤性アルカリホスファターゼ(placental alkaline phosphatase,PLAP)やc-kit(CD117),D2-40,胎児性癌の診断にはCD30,卵黄囊腫瘍にはAFP,絨毛癌や合胞性栄養膜細胞成分にはhCGなどが用いられてきた(表2)2,3).最近では卵黄囊腫瘍のマーカーとしてGlypican-3も登場している4).これらは現在でも頻繁に使用されているが,胎児性癌と卵黄囊腫瘍,胎児性癌と奇形腫の区別を明瞭につけることのできるマーカーはこれまで存在しなかった.OCT4は,この問題点を解決する新たな免疫組織化学的マーカーとして注目されている.OCT4の免疫染色の意義を知るためには,まず,精巣の発生と分化,および胚細胞腫瘍の組織発生を理解しておく必要がある.
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