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遺伝子検出による個別化医療
ヒトゲノムの解読や疾病に関する分子的理解の進歩に伴い,疾病や体質などと遺伝子型の関連が明らかになり,数多くの疾患マーカーや,遺伝子型による罹患のリスク,薬の作用・副作用の現れ方の違いなどが理解されてきている.近年の次世代DNA(deoxyribonucleic acid)シーケンサーの飛躍的なシーケンス能力の向上(図1)は,解析速度の向上と解析コストの低減化を実現し,遺伝子解析技術を驚異的に発展させた.特に遺伝情報の1文字の違いであるSNP(single nucleotide polymorphism)を網羅的に収録したデータベースは急速に充実してきている.2008年1月には,イギリス・アメリカ・中国を中心とする研究グループが,「1,000人ゲノム計画」を開始した.この計画は,世界中の複数母集団から選んだ約1,000人を対象に,ヒトゲノムのシーケンシングを実施して,詳細な遺伝子マップを作り,疾患に関連する遺伝子変異を迅速に突き止めることを目指している.
ゲノムをすべて解読した結果から作成されるデータベースは,現在主流の遺伝子型解析技術であるタイピング(特定部位の遺伝子型のみを解析すること)によるデータベースとは比較にならないほどの高解像度の情報が得られる.ゲノムワイドな遺伝子解析の流れは,現在よく使われているマイクロアレイのような,DNAチップを用いるタイピング技術から,今後はシーケンスに基づく技術に移行し,疾病マーカーの発見や,遺伝子型と体質の関連についての発見はますます加速していくであろう.これらの情報は,個別化医療,すなわち,患者の体質に合った医療を提供するための基本となるものである.例えば,ゲノム上の特定の部位が病気に関連していることがわかったときに,データベースを検索することで,その領域に起こりうる変異型がわかる.これは,多数ある変異のなかで,どれが直接その疾病の原因になっているかを同定するために役立つ.
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