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癌の浸潤と免疫染色
河内 洋
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1東京医科歯科大学人体病理学分野
pp.1015
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102957
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- 文献概要
今から40年ほど前,大腸癌の治療は開腹手術するしか方法がなかった.その後,わが国では目覚ましい内視鏡技術の進歩があり,粘膜下層までにとどまる早期癌の多くが内視鏡により切除できるようになっている.ただし,リンパ節転移の可能性が高い場合は,たとえ原発巣を内視鏡で採りきれたとしてもリンパ節郭清の必要があるため,追加手術を考慮しなければならない.したがって現在,内視鏡で切除された病変に対し,リンパ節転移を起こす可能性が高いのか低いのかを見極めることが病理診断に求められている.大腸癌では,粘膜下層浸潤の程度,癌細胞の小胞巣・個細胞性浸潤(簇出)の程度,分化度,脈管侵襲の有無などを評価する必要があるが,その際免疫染色の併用がきわめて有用である.粘膜筋板を認識するデスミンや平滑筋アクチン,癌細胞胞巣を認識するサイトケラチン,血管やリンパ管の内皮細胞を認識するCD34やD2-40といった抗体を用いた免疫染色は,日常の病理診断において頻繁に用いられており,追加治療方針の決定に貢献しているといえる.
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