Laboratory Practice 〈遺伝子〉
臨床検査技師がかかわる遺伝カウンセリング
宇津野 恵美
1
,
野村 文夫
1
1千葉大学医学部附属病院検査部・遺伝子診療部
pp.1431-1435
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200048
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はじめに
千葉大学医学部附属病院の遺伝カウンセリング(genetic counseling:GC)業務のスタートは2003年4月で,すでに10年が過ぎ,症例数も1,000件を超えている.産科や小児科では日常診療の枠のなかで,GCの一部に相当する臨床遺伝情報提供を行っているが,当診療部の大きな特性は,病院検査部の遺伝子検査室が母体となって始動したことである.
遺伝学的検査に限らず,診断,治療方針の決定,そしてその効果を判定する一連の流れにおいて,臨床検査の果たす役割はいわば医療の入り口である.さらに遺伝学的検査は一般の臨床検査と異なり,結果(遺伝情報)の取り扱いにおいてはその特性(一生変わらない不変性・血縁者と一部共有する共有性・未発症でも患者である血縁者と同じ病気の原因遺伝子の有無を知ることができる予知性)に十分配慮した対応が求められるにもかかわらず,検査技師は検査の実施と結果報告の部分のみの関与となっている.血液を使って行う検査というひとくくりのなかで,医療者の配慮も患者・家族の理解もないままに検査が進み,陽性の結果が出て初めて,その特性に驚かされるという現状があった.
そこで,遺伝学的検査を提供する立場として,これらの問題にも適切に対応できる体制を整えなければという思いから,検査部の医師(臨床遺伝専門医)と認定遺伝カウンセラーの資格も有する臨床検査技師(以下,検査技師)が協働して,遺伝子検査室にGC室を併設し,5年後には遺伝子診療部として独立させた.中央診療部門が各診療科にアプローチすることは容易なことではないが,その経緯を紹介したい.
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