技術講座 病理
―シリーズ:穿刺細胞診の手技と読み方―3.腺腫様甲状腺腫と濾胞性腫瘍の鑑別への取り組みと液状化細胞診の検討
佐々木 栄司
1
,
髙橋 真帆
1
,
田村 恵
1
1伊藤病院診療技術部
pp.1437-1445
発行日 2009年12月1日
Published Date 2009/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102689
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新しい知見
2004年頃から,超音波の新技術の一つとして腫瘤の硬さを画像化するエラストグラフィーが臨床現場でも応用されはじめた.この技術の開発当初からかかわっていた乳腺領域においてはその有用性についての報告が多くなされており1),現在では他領域にも応用され検討が進んでいる.乳腺は部位的に周囲に硬い組織がなく,腫瘤と周囲を含めた組織弾性測定が容易だが,甲状腺は皮膚,前頸筋群の下に甲状腺実質があることから周囲にも硬い部分が多く,エラストグラフィーでの腫瘤の性状評価は乳腺よりも難しいとされている.しかし,甲状腺結節病変に対するエラストグラフィーの臨床応用で腫瘍内部の評価をした場合,濾胞癌の典型像では腫瘍中心部よりも腫瘍内部の外縁が硬いことを示すデータが報告されている(図1)2).このことは,周囲を圧排しながら腫大増殖していく濾胞癌は,中心部よりも外縁部にいくほど細胞密度が高く硬いことを示す.細胞診で濾胞癌を診断するためには,採取された細胞集塊に濾胞構造をとる重積が著明な像を有しているほど濾胞性腫瘍を推定しやすい.また,濾胞癌の病理組織像では腫瘍内部が均一な細胞密度を有しているものばかりではなく,不均一なものも少なくない(図2).このようなことから組織のどの部分から細胞採取するかは判定を大きく左右するファクターとなる.腫瘍中心部を“ただ穿刺する”のではなく,腫瘍内部外縁付近の細胞増殖や浸潤傾向が強く,細胞密度の高い部分からの検体採取が望ましい.また,穿刺部位選定にエラストグラフィーを用いることは,細胞診の濾胞癌診断率の向上に大きく寄与するものと考える.
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