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はじめに
近年,粥状動脈硬化を基盤とする心血管疾患は世界的規模で死因のトップを占めるようになっており,粥状動脈硬化の予防と治療は重要な課題である.欧米に比し冠動脈疾患が少ないわが国においても,食生活やライフスタイルの変化により,脂質異常症(高脂血症),糖尿病などの患者が増加しており,その結果生じる冠動脈疾患も問題となっている.
脂質異常症のなかでも特に高低比重リポ蛋白コレステロール(low density lipoprotein cholesterol,LDL-C)血症は,多くの疫学調査の結果から,冠動脈疾患の強い危険因子であることが確立している.高LDL-C血症に対して,ヒドロキシメチルグルタリルCoA(hydroxymethylglutaryl-CoA,HMG-CoA)還元酵素阻害薬(スタチン)を中心とした薬物治療が広く行われ,LDL-C低下によって冠動脈硬化の発症や進展が抑制されたという一次予防・二次予防の大規模試験の成績が国内外で数多く得られてきた.一方,高トリグリセリド(triglyceride,TG)血症に関しては,1,000mg/dl以上の著しい高TG血症では膵炎のリスクが増加するが,最近では高TG血症も冠動脈疾患のリスクになることが明らかになり,高TG血症に対するフィブラート系薬剤の投与によって,心血管イベントの発症が抑制されたという成績も得られてきている.
しかし,脂質異常症の治療に際しては,動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の脂質管理目標値になかなか到達できない場合も多く,スタチン,フィブラート系薬剤以外の薬剤の使用も必要となる.脂質異常症治療薬にはそれぞれ特長があり,作用機序も異なっている.本稿では各種の脂質異常症治療薬について,作用機序・使い方・検査値の変動などを紹介する.
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