増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学
III 一般検査
各論
2 糞便
福富 裕之
1
1(株)昭和メディカルサイエンス検査部
pp.1034-1037
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102577
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はじめに
糞便は私たちが毎日摂取する食物の消化状況を反映しているため,これを形態学的に検査することは消化器疾患や代謝疾患の状態を知るうえで極めて重要である.また,尿検査と同様に採取時に患者に対して傷みなどの負担がほとんどないことから,繰り返しの検査が容易であるにもかかわらず,実際には寄生虫や細菌検査以外では糞便顕微鏡検査の頻度はあまり高くない.正常な糞便の成分の多くは消化吸収されなかった食物残渣であり(図1),顕微鏡検査時に観察される有形成分のすべてを形態的に分類することは困難を極めるが,基本的成分は認識しておく必要がある(表1).何らかの疾患が疑われる場合には,多量の未消化食物,血液,膿汁,粘液,上皮細胞,寄生虫や原虫,病原性細菌などが検出される.また,形状や色調などの肉眼的な外観観察も怠ってはならない(表2).糞便の外観観察には必要に応じて実体顕微鏡を使用するとよい.糞便は放置すると乾燥,腐敗,発酵などにより外観が変化するので,できる限り速やかに検査を実施するのが望ましい(図2).
以下に各疾患別に対しての鑑別点を述べる.
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