増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学
II 微生物検査
総論
4 感染所見の読み方
2 感染症の病期の所見
相原 雅典
1
1医療法人社団徳風会髙根病院検査部
pp.919-921
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102553
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はじめに
細菌や真菌による感染は外界と接する粘膜面で成立するが,多くの粘膜面には先住の常在細菌叢があり,外来菌はまずその常在菌叢内で縄張りを獲得する必要がある.めでたく粘膜面で繁殖できた時点で感染は成立するが,今度はさまざまな生体の感染防護機構の集中砲火を浴び,その戦いに勝って初めて感染症(原発病巣形成)の成立をみる.生体の感染防護機構が破綻すると,病巣は悪化・拡大する(急性期)が,時には好中球などの細胞内に侵入した菌が血流に乗り(初期菌血症)他の臓器に運ばれ,そこで二次病巣(転移病巣)を形成することがある.いずれの病期においても抗菌薬治療が奏効すれば症状は暫時改善(治癒期)するが,無効であれば症状は悪化または遷延(持続型感染)する.人体内で起きる感染から発症,治癒に至る経過は,病巣内を観察できればある程度把握できるが,グラム(Gram)染色標本の鏡検はそのためのツールとしても最適である.
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