けんさ質問箱
ホルマリン固定組織における抗原賦活法の原理
後藤 義也
1
,
安田 政実
1
1埼玉医科大学国際医療センター病理診断科
pp.83-87
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102355
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Q.ホルマリン固定組織における抗原賦活法の原理
酵素抗体法において,蛋白分解酵素処理や加熱処理により抗原性が賦活化されるとありますが,このような処理によってどうして賦活化されるのかがわかりません.さまざまな本には立体障害の除去(unmasking)と書いてありますが,理解できませんでした.また,加熱処理にはMWやオートクレーブなどがありますが,これらは単に温度の違いによるものなのでしょうか.(郡山市 A.K.生)
A.後藤義也・安田政実
はじめに
現在,病理組織診断において免疫組織化学染色は日常的に不可欠な手法として確立されています.しかし,組織内で起こっている反応について,すべて明らかにされているわけではなく,今回質問のあった抗原賦活法の原理と適性条件についても,明確に解説することは容易ではありません.
抗原賦活法は,免疫組織化学染色の精度管理の点からも重要であることを踏まえて,日常的な経験と実際に検討した結果,および参考文献から賦活法の効果と問題点について概説します.
賦活法に影響を与える因子として,標本作製過程で起こる組織内抗原の変化が挙げられます.その変化は“非可逆性”と“可逆性”に大別されます.前者は賦活法を施行しても抗原性の回復は望めず,後者は賦活法を適正に施行することで抗原性を回復させることが可能です.両者に対し強く影響を与える因子として最も重要なのは固定です.日常業務内で扱う病理組織検体はホルマリン固定が施されており,抗原賦活化の結果は,固定状態(条件)に強く影響を受けることが経験的に知られています.
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