Laboratory Practice 〈微生物〉
食品のClostridium perfringensの検査法
三木 康弘
1
,
宮本 和明
1
1和歌山県立医科大学医学部微生物学教室
pp.1450-1453
発行日 2008年12月1日
Published Date 2008/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102328
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
芽胞を形成する代表的な菌の一つであるClostridium perfringens(ウェルシュ菌)は,古くから食中毒を起こす病原菌として知られている.一方,この菌は土壌や海水などの環境,ヒトや動物の腸管内などに存在し,身近な菌であると言える.ヒトの疾患のなかで,最も多くみられる消化管疾患(食中毒など)を起こすウェルシュ菌は,全体の5%程度である.これは,ヒトの消化管への病原性に最も重要な毒素であるエンテロトキシン(Clostridium perfringens enterotoxin,CPE)を産生する菌は5%程度に過ぎないことによる.このCPEを産生する菌の検出が食品衛生上最も重要なことになる.
今までの報告によると,食品におけるウェルシュ菌の混入は数%から100%と非常に幅がある1~4).この理由として,対象とした食品の種類(特に食肉),地域や時代,菌の培養方法など多くの点で異なっていることが考えられる.言い換えると対象とするものや検出方法で大きく変わるということになる.食品からウェルシュ菌を検出する場合,この点をまず考える必要がある.
一方,食中毒の事例におけるウェルシュ菌の検出ということになるとかなり事情が異なる.この菌による食中毒の発生には,食品中で菌が大量に増殖(原因食品中では105cfu/ml以上)する必要があるため,これだけの菌量を検出する場合と通常食品中に含まれる菌量(3cfu/g以下)(調理前の原因食材に相当すると考えられる)を検出するのとでは方法が異なってくる.まず,以上述べてきた点に留意し,ウェルシュ菌検出の目的と対象を考えて,検出方法を選択する必要がある.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.