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はじめに
臨床検査の標準化と聞いてすぐに思い浮かぶのは,臨床化学検査の標準化である.検体検査では臨床化学検査が最も長い歴史をもち,標準化も群を抜いて進んでいる.国際度量衡局(International Bureau of Weights and Measures; Bureau International des Poids et Mesures,BIPM)の下部組織である「臨床検査医学におけるトレーサビリティ合同委員会(Joint Committee for Traceability in Laboratory Medicine,JCTLM)」が承認した基準測定操作法と標準物質の多くは,化学量論的に計量学的トレーサビリティ(metrological traceability)がつながる臨床化学分野のもので,その測定結果は国際単位系(International System of Units; Systeme International d'Unites,SI)の基本量(base quantity)である重さ(または物質量,モル)につながっている.しかしながら血液学検査とりわけ血球計数では,測定対象が物質ではなく物体(細胞,または細胞に準じるもの)であることが,標準化を困難なものとしている.
2005年の11月にパリのBIPMで開かれたJCTLM Meetingで,国際血液学標準化委員会(International Council for Standardization in Haematology,ICSH)のサイトメトリーパネル(expert panel on cytometry)の一員であるシスメックス社のFujimotoが,「Blood Cell Counting Standardization」1)と題し,赤血球数,白血球数,血小板数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリットの基準測定操作法と,6社の血液分析装置の測定値の比較結果についてプレゼンテーションを行った.このプレゼンテーションのなかで,特に赤血球数の基準測定操作法の詳細とその測定不確かさ(measurement uncertainty)を示したことが契機となり,血球計数(blood cell counting)についても国際測定標準としての基準測定操作法を検討する機運が高まった.翌2006年の11月に英国のテディントンで開かれたJCTLM Meetingで,同社のShirakamiが,「Standardization in Blood Cell Counting - Current Status and Future Direction」と題し,血球計数の計量学的トレーサビリティの現状と,基準測定操作法を検討する必要性を訴えた.現在,JCTLMの15番目のレビューチームとして血球計数のチームが立ち上がろうとしている.
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