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はじめに
日常検査におけるHbA1C測定には高速液体クロマトグラフ(high performance liquid chromatgraph,HPLC)法や免疫学的測定法がある.従来のHPLC法では検体である血液に含まれる不安定型HbA1Cやカルバミル化ヘモグロビンなど,HbA1C以外の修飾ヘモグロビンが測定を妨害することが指摘されてきたが,最近ではこの問題が解決され1検体当たり1~1.5分で測定可能な装置が開発されている.しかし,異常ヘモグロビンまたは変異ヘモグロビン(以下,異常Hb)を含む血液ではHbA1C測定に著しい誤差を与え,免疫学的測定法でも正しく測定できない場合があることから,糖尿病の診断やコントロールの指標としてHbA1Cを利用する場合は異常Hbの有無を一度はチェックする必要があるといわれている1).
異常Hbとは遺伝性ヘモグロビン異常症に見られるグロビン鎖の構造異常を有するヘモグロビンであり,変異の違いにより700種類以上が知られている2).わが国における出現頻度は2,000~3,000人に1人3)と,決して稀な症例ではなくHPLC法によるHbA1C測定で数多く発見されてきた3,4)が最近の日常検査用HPLCでは検出できない異常Hb症例5)があるのも事実である.異常Hbの確実な検出や同定には質量分析法やDNA解析法が用いられるが1,3,6,7),日常検査室で実施するのは困難である.
われわれはHbA1C測定用HPLCである東ソー製HLC-723G7型(以下,G7)やその後継機種であるHLC-723G8型(以下,G8)の高分解モードを利用して,現在に至るまでの7年間に37例の異常Hbを検出してきた.本稿ではこの経験をもとに異常Hb症例のHbA1C測定について,HPLC法における測定値の挙動や考慮すべき点について述べ,免疫学的測定法に関しても文献的な考察を加える.
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