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今回,表題のような質問を受けた.質問をされた方には大変申し訳ないことになってしまうが,表題の質問の文言にはそれ自体に矛盾をはらんでおり,正確には「悪性リンパ腫の免疫学的表現型検索(immunophenotyping)の結果が,フローサイトメトリーと免疫組織化学とで大きく異なることがあるが……」としなければならない.しかしながら,臨床医は少なからず「免疫学的表現型の検索=表面マーカー検索」であると誤解する傾向にあり,それに関する用語上の混乱をきたしているのも事実である.そのため,今回のような質問が出てくるのも無理がない.ただ,本案件については事前に編集部にその説明と相談を行い,そのような問題点を指摘するためにもあえてそのままの質問内容・表現で今回の執筆依頼を受けさせていただくに至ったことをご了解いただきたい.
回答のまとめとして,悪性リンパ腫が疑われて生検組織における免疫学的表現型検索において,フローサイトメトリーで陰性と判定されながら免疫組織化学で陽性とされる場合を表に示す.今回の質問の対象となるのはその「Ⅰ」と「Ⅱ」の二つの場合であり,本稿では主にその2点に触れながら回答させていただく.一方,それと反対にフローサイトメトリーで陽性と判定されながら免疫組織化学で陰性となってしまう理由は,①免疫組織化学(パラフィン切片)用の抗体の感度が低いか一定しないこと(特にCD5)や,②フローサイトメトリー用の検体のみに腫瘍細胞が存在していること(=病理用の検体に腫瘍成分が含まれていない:sampling error),③手技的な問題,などが挙げられる.もっとも,どのような事象に遭遇しても,フローサイトメトリー上で本当に陰性なのか,あるいは非特異的な蛍光反応を陽性と誤判定してはいないのか,という点を検証する姿勢も重要である.
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