検査じょうほう室 病理:病理標本に見られる不思議な現象
酸性フクシン―膠原線維と細胞質を染め分けられる理由
藤田 浩司
1
,
工藤 玄恵
1
1東京医科大学病理学第二講座
pp.1386-1390
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101650
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はじめに
組織染色,つまり組織切片への色素の吸着現象は官能基の種類,分子量,溶媒の環境,そして組織の蛋白質構造など複雑な要因が絡み合う.その結果,同じ色素を使用しても,染色法の相違により染色される対象組織が異なる.
その代表的な1例として酸性フクシンが挙げられる.それはエラスチカワンギーソン染色(elastica van Gieson stain;EVG染色)では,膠原線維を選択的に赤色に染め,細胞質をピクリン酸により黄色に染め出す.これに対してマッソントリクローム染色(Masson-trichrome stain)では,ポンソーキシリジン,酸フクシンの混合液として細胞質を赤色調に,膠原線維をアニリン青により青色に染め出す(図1,2).
これらの染色は複数の酸性色素を組み合わせて用いられ,いわゆるポリクローム染色に属する.ほかに身近なポリクローム染色法として細胞診で用いられるパパニコロウ染色(Papanicolaou stain)がある.
本稿では,同じ酸性色素を使用して,どうして染色態度が違うのか,その理由について色素の性質,膠原線維の化学,そして各染色法の原理の立場から述べる.
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