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はじめに
高脂血症とは,脂質〔原則としてコレステロールとトリグリセリド(triglyceride;TG,中性脂肪)〕の血中レベルが正常以上に高値を示す病態である.近年,わが国においては食生活の欧米化とモータリゼーションの発達により,高脂血症とともに,高血圧,糖尿病,痛風,肥満などに代表される生活習慣病が増加し,大きな社会問題となりつつある.いずれの病態もリスクファクターと呼ばれ心筋梗塞の発症率の上昇をもたらすこととなるが,疫学的に最も心筋梗塞の発症との因果関係が明らかなリスクファクターは血中コレステロール,特に低比重リポ蛋白(low density lipoprotein;LDL)-コレステロールである.また,最近では高TG血症についても冠動脈疾患のリスクファクターとして重要視されている.
このように高脂血症の診断は医療施設受診者の健康管理のうえで必須の項目である.
しかるに医療費の削減を目的とした新しい医療費支払い制度である疾患群別定額払い制度(Diagnosis-Related Groups/Prospective Payment System:DRG/PPS)がわが国にも導入され,血中脂質に関する臨床検査もこのシステムに基づいてなされることになる.このシステムはわが国でも毎年増大する医療費の削減を目的として本格的に導入されつつあり,ここでは治療に対して支払われる金額が疾患と重症度によって定額化されるため,当然,治療に要する総費用が少ないほど病院が儲かることになる.このためにDRG/PPSが導入されると,各施設とも入院期間は大幅に短縮し,高額な治療薬,検査,の使用頻度が低下し,経費の安い薬剤や検査手段の使用が主流となる.さらに臨床検査についても項目が選択され,その回数が減少することになる.しかし高脂血症の診断を確実,迅速に進めるためにも脂質に関する臨床検査は不可欠であり,DRG/PPSにおいても血中脂質の検査の重要性は変わることはない.しかし高脂血症の診療の有用性から(さらには動脈硬化進展の危険度の判定についての必要性から)検査内容が再評価され,診療に有用で利用価値が高い検査は存続し,診療内容に直接貢献しない検査は見直されなければならない.高脂血症診断と検査のポイント(保険適応)については衛藤によるごく最近の総説があり1),またDRG/PPS対応の脂質についての臨床検査については既に中谷による詳細なガイドラインがあるので参照されたい2).
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