増刊号 包括医療と臨床検査
第1章 総論―包括医療とは
2.包括医療と臨床検査
5)包括医療時代に生き残る検査
北村 聖
1
1東京大学医学教育国際協力研究センター
pp.916-919
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101543
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はじめに
日本の医療制度は,従来の出来高払い医療から,臨床検査の「マルメ」の時代を経て,いよいよ包括医療の時代に入っていく.その最大の理由は,医療費の増大に歯止めをかけることにあるが,もともとの原因は,少子高齢化社会の到来にあることは周知の事実である.従来の出来高払い制度は,検査をはじめ,処置,投薬に至るまで必要性が少しでもあれば行うといういわば「過剰医療」の方向へいく制度であった.そのなかで,臨床検査は,必要性を明示することが比較的容易なものであり,多くの検査が行われ「検査漬け医療」と揶揄される時代もあった.一面,その頃は検査が利益を生んだため多くの医療施設で検査室・検査部が整備され,また人的な側面からも優秀な検査技師が養成された.
「マルメ」の時代は,基本的には出来高払いであり,検査部の整備や人的援助もあったが,反面,医療経済の考えなくしては検査部運営はなりゆかない状況を作り出した.検査部長,検査技師長は病院運営に深くかかわることを余儀なくされるようになってきた時代であった.
そして,いよいよ包括医療の時代に入っていく.本年度からは大学病院と特定機能病院だけの極めて限られた部分での導入であるが,今後,大病院を中心により広く包括医療が取り入れられていくであろうと予想される.本稿ではそのような大きな波が押し寄せたときに,臨床検査はどうなるか,近未来を推定してみたい.
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