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同種造血幹細胞移植
同種造血幹細胞移植は難治性造血器疾患に根治をもたらしうる治療法として確立されてきた.移植件数は日本造血細胞移植学会の報告からもわかるように年々増加しており,造血幹細胞のソースも骨髄(bone marrow transplantation,BMT)だけでなく,末梢血幹細胞(peripheral blood stem cell transplantation,PBSCT)や臍帯血(cord blood stem cell transplantation,CBT)も増えている.従来型の同種造血幹細胞移植は,主に造血器悪性腫瘍(白血病,骨髄異形成症候群,悪性リンパ腫など)や再生不良性貧血に対し,大量の抗癌剤や全身放射線照射(total body irradiation,TBI)を用いた骨髄破壊的前処置治療により腫瘍細胞および正常造血細胞を死滅させ(total cell kill),ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen,HLA)型が一致したドナーから移植した造血幹細胞により骨髄を再構築することを目的として行われる治療法である.さらに,同種造血幹移植の場合は移植した免疫細胞により腫瘍細胞を攻撃する移植片対白血病(graft versus leukemia,GVL)効果による免疫療法としての効果が期待できる.
骨髄破壊的前処置治療は高齢者や臓器障害を有する患者には前処置治療に伴う毒性(regimen-related toxicity,RRT)が強いため困難であったが,最近では骨髄非破壊的前処置によるいわゆる“ミニ移植”も行われている1).ミニ移植は前処置レジメンによる骨髄抑制の強度によって区別されており,一つは造血幹細胞輸注を行わなくても28日以内に造血が回復し,同種造血幹細胞移植後の造血回復時に混合キメラ状態となるような非骨髄破壊的前処置(nonmyeloablative preparative regimen)による骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(nonmyeloablative stem cell transplantation,NST)と称され,もう一つは造血幹細胞のサポートがなければ28日以内に造血が回復しないもので,従来型の骨髄破壊的前処置による移植とNSTの中間に位置し,RIST(reduced-intensity stem cell transplantation)と称されている.NSTやRISTでは前処置治療で腫瘍細胞を完全に死滅させることはなく,主にGVL効果によって腫瘍細胞が死滅していくことが期待されている.
同種造血幹細胞移植は高度な医療であるため移植前後での厳密な管理が必要であり,臨床検査の果たす役割は非常に重要となる.まず移植可能かどうかの組織適合性検査から始まり,造血幹細胞数算定,治療効果判定,合併症のチェックなどさまざまな点において,その情報がなければ移植医療はほとんど実施できないといっても過言ではない.
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