増刊号 細胞像の見かた―病理・血液・尿沈渣
第1章 病理 細胞像からここまでわかる
3.乳 腺
8)線維腺腫
都竹 正文
1
,
秋山 太
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2癌研究会研究所病理部
pp.934-937
発行日 2004年9月15日
Published Date 2004/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100754
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概念および臨床的事項
線維腺腫(fibroadenoma)は乳腺組織の間質線維性結合組織(以下,間質結合織)と上皮(乳管上皮)との両成分で構成される良性腫瘍である.臨床的には20~40歳代の女性に多く発生し,可動性良好で薄い被膜で被われた限局性腫瘤である(図1~3).通常,乳房内に孤立性(稀に両側性,多発性)の境界明瞭な2~4cm大の腫瘤として触知される.腫瘤の硬度は弾性硬から硬まで種々の硬さを呈する.若い女性に発生する線維腺腫は時に急速に発育増大し,8~10cm大の巨大な腫瘍を形成することもあり,特に重さが500g以上もある場合には巨大線維腺腫(giant fibroadenoma)と呼ばれる.若年性線維腺腫(juvenile fibroadenoma)は青年期に発生し,急速に増大し,対側の乳房の2~4倍の大きさとなり,皮膚のひきつれや乳頭の偏在などを示すもので,組織学的には間質の細胞密度が比較的高いもので特別なものではない.
この腫瘍はエストロゲンを主体とするホルモン環境により増大,退縮傾向を示すことからエストロゲンに対する局所的感受性増大に起因するものであろうと考えられている.近年,わが国では線維腺腫が増加の傾向にあり,しかも上皮成分の増殖の著しい症例が増加の傾向にある.これは,わが国の生活様式や食生活の欧米化に伴うホルモン環境の変化によるものと考えられている.
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