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老人性萎縮の組織と細胞像
子宮腟部の重層扁平上皮は,有経婦人(初経から閉経まで)では20~30層と厚く,基底膜上の基底細胞から傍基底,中間層,表層細胞へと成熟する(図1).老人性萎縮とは,卵巣機能の停止(閉経)に伴い,腟粘膜の扁平上皮は成熟機能が失われて萎縮し,数層の薄い上皮へと変化した状態をいう(図2).そのため,感染に対して抵抗力が弱く,容易に炎症を起こしやすくなる.したがって,腟粘膜の細胞成熟度指数(maturation index,MI)は100/0/0の傍基底型を示し,感染による炎症性背景を伴っている.炎症刺激を受けた傍基底型細胞は核増大,クロマチンの粗米造化,核縁の不整などを示すため,N/C比(nuclear-cytoplasmic ratio,核-細胞質比)が大きくなり,しばしば悪性細胞との判別が難しくなることがある(図3-a).したがって,このような場合はエストロゲン投与によってその回復状態を観察することも必要となる.また,剥離細胞標本では背景に炎症細胞に加え,滲出物が見られ,傍基底細胞の細胞質の好酸化,核の膨化,核濃縮,核破砕,脱核細胞などの萎縮・変性によるいろいろな細胞変化も見られ,細胞像は多彩となる(図3-b).このため,扁平上皮癌との鑑別が必要となる.
平上皮化生細胞と組織
化生変化とは,正常な組織細胞が異種の組織細胞に置き換えられる現象である.婦人科領域にあっては,偽ビランを伴う慢性頸管炎の場合に起こる.すなわち,円柱上皮下の予備細胞が増殖し,細胞を新生し▲平上皮に分化していく過程である(図4,初期化生の組織像:(1)円柱上皮下に(2)予備細胞が重層化して▲平上皮に変化している).このように化生変化を起こした場所から▲脱した細胞が化生細胞であるが,これは慢性頸管炎に必ず随伴するものではなく,むしろ出現頻度は低い.それは,化生途上にある組織細胞は結合力が強く,成熟した▲平上皮細胞のように容易に▲離することはないからである.
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